自己啓発本の定義とは?自己啓発本の選び方。
Tokyo FM の番組で「自己啓発にハマった経験者が語る、自己啓発の無意味さ」という特集が印象に残った。
街頭インタビューでは、自己啓発本としてドラッガーとかDカーネギーの「人を動かす」などがあげられていた。ドラッガーの著作を”自己啓発”本として読んだことがなかったもので違和感を感じた。そもそもでなにをもって自己啓発本になるのかジャンルの定義がよくわからない。Amazonで「自己啓発」のカテゴリーを見ると、それは「自己啓発」本とはいわないでしょ、という書籍もカテゴライズされている。
以前は心理学者が書いていたような内容が10年、20年と時を経て認知、流布され、それが焼き直しされ自己啓発本としてまとめられているものもよくある。断捨離、かたづけ、そうじをライトアップして書かれた本が売れているようだが、こういうことは品質管理やトヨタ式経営に通ずるところもあるし、舛田光洋さんなどはもっと前から書いている。日本がすごいところ、海外に誇れることのひとつは、社長がトイレ掃除をする会社がたくさんあることだし、日本の会社のすごいところでもある。毎年8月になると「失敗の本質」が売れるのと同じ法則ではないかと考えられる。
哲学、思想、歴史、論説などてに取りやすいよう書棚に区分していれるためのジャンルでしかなく、読み手がどう読むかで「成功本」「人生本」「経営者本」など受け取り方も違ってよいものだと思う。
小田嶋 隆さんの今の日本の人は宗教へ依拠がなく自己啓発にはまりやすい、という主旨の解説は明快だった。
生き方とか人生のあり方といった命題はすぐに結論がでるものではなく、また、自己評価と他者評価は違うものだ。自己啓発本や自己啓発活動?で短期間に結論づけられることではない。
自己啓発本は頭の整理をしたり、スイッチをいれるアクセントとして活用するには手ごろだ。インプットとアウトプットのバランスがとれていないと、頭の中にノイズがたまってくる。パソコンのデフラグと同じでファイルのゴミを捨ててときどき整理リフレッシュしないと判断力や理解力が落ちてくる。何冊も自己啓発本を読んで答えがみつからないと悩む人はもともと勉強不足ではないか。
自己啓発本と適度なつきあいをする上でひとつだけはっきりいえることは、著者の経歴・プロフィールありきで自己啓発本を選ぶことだと思う。
人はそれぞれバックボーンが違っているから、著者の経歴・プロフィールを読めば自分にとって役に立つかどうかおおよそ見当がつく。心理学の一般論をかみ砕いて説明する本なのか、実体験に基づくアドバイスなのか、セミナー参加や教材を買わせるための入り口(フロント)商品なのか、どこかの会社で実践して効果があったやりかたを共有するものなのか、自分のおかれている環境、シチュエーションに近い経歴・プロフィールの持ち主の著書は現実的に感じられるだろうし、その著作が書かれた年代が自分の年齢に近いほうがよい。
もちろん出版社も書店も商売なので、売りやすいように作為 が施されていると思ったほうがよい。著者のプロフィールは基本的に装飾されているものだ、いわば盛ってある。
映画のプロモーション同様、全米が泣いた、世界中が感動した、と字幕がでても額面通りに受け取ってはいけない。ちょっと冷めた、客観的な視点で受け取るくらいでちょうどよい。
以前知り合った人で、難関大学を出て、とあるメーカーの研究所で研究職をして、精神的に病んでしまい、以後、就職ができずにいる人がいた。当人は基礎研究を希望しており、希望の部署に配属されるために周辺研究や実験補助に日々没頭していたというのだ。そのことを聞いた瞬間、世間知らずだったのだな、と感じた。その人は難関大学の大学院を卒業していたが、最難関大学ではなかった。その業界では研究開発力にすぐれた一流企業に所属していたが、その人では先端研究に配属される可能性はもともとなかったのだ。その会社は新卒、中途採用とも最難関大学、しかも研究室指名で研究員を採用しているところだった。大学の研究室の段階で研究レベルが違うから、入社段階で期待されている役割が違うのだ。こればっかりは仕方のないことで、その人が知らなかったことは残念なことだ。緻密さとか多方面から検証することには秀でているわけだからその強みをいかせる違う道を選ぶことをアドバイスしたところ、意外なところでマッチングする仕事が見つかり、今では農業と向き合っているという。
他者や異文化との交流経験が不足し、閉塞感が生まれ、そこから不安、焦燥感を感じるようになった人が心身のバランスをとるために自己啓発本を読みだすとはまりやすいのだろう。
自己啓発本を手に取ることはある意味防衛本能の表れではないかとも思う。自己啓発本に手が届かなかった人、心身のバランスを崩しすぎて手おくれになると、どこかしら心や精神が病んでくる。病む手前で自己啓発本を手にすると当然はまりやすくなる。
日頃からインプットとアウトプットのバランスを維持する努力をしている人は、そう自己啓発本にははまらないだろう。さきほども書いたがさもなければ勉強不足。世の中を構造的に理解していない、現実を知らないということだ。