自分のアタマで考えることにしようっと

日常視点の目からうろこのビジネスアイデア、ちきりんアンサーブログ

非正規社員でも安定して仕事を続けるために。

最近、電話オペレーターの質が落ちているような気がする、

スクリプトの棒読みはあたりまえ、質問をすると、とんちんかん、な回答。

アウトバウンド(業者側からかけてくる電話)をうけるときははじめにこちらから目的をはっきり尋ねるようにしているのだが、訓練を受けていないのか、口ごもってしまう始末。質問をされて、考える時間を与えられずに即座に答えを要求される・・・。

 

何か月か前のことになるが、事務所の手続き関連で電話でやりとりを何度か重ねる機会があった。伝えたことが理解されず、何度も同じ話を聞かれる繰り返しに辟易した。こちらにとって手続きは非生産作業なので、空いた時間で限りなくストレスなく済ませたい。埒があかないので、電話相手が年配の女性と想像され、こうるさい嫌な客だなと自分でも思いながら、こちらから、もう一度いいますね、ゆっくりいいますから、書き取ってください、とお願いしたら、話がやっと伝わった。そのあと、新しいサービスのご案内まできっちり聞かされるはめになり、いい意味の厚かましさ、ふてぶてしさに感心したものだが、後日おなじ会社の他の(新サービス)部門から電話があって、またもや要領を得ない話で辟易した。(この会社とはもう2度とつきあいたくない、と思ったが社会インフラ関連の業種なので近い将来またつきあうこともなるだろう。)

たまたま出くわした担当者個人のスキルの問題ならば、ちょっと運悪かったなで済ませてしまうところだが、同じ会社の別部門からのコールでも痛い思いをしたということはこの会社のコールセンターの(本体でコールセンターを運営していることはなく系列企業がやっていることだろうが。)教育レベルが推し量れる気がする。

コールセンター、コンタクトセンターは非正規雇用の活用の典型例で雇用機会の拡大に期待されてきた職業で、多少のスキル不足は目をつぶってあげないといけない。それにしても、ちょっといただけない対応がつづいたものだ。

 

たしか、オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン准教授の論文によると、人工知能にとって代わられる職業リストで、電話オペレーターは消える職業、なくなる職業のかなり上位にあったはずだ。コスト面でいけば、コールセンター、コンタクトセンターはまっさきに機械にとってかわられる仕事であるに違いない。

非正規雇用正規雇用化が国家レベルの課題として取り組まれている現状ではあるが、現実問題として、企業がそう簡単に正規雇用を増やせるほど台所事情はかんばしくないだろう。コールセンター、BPOなどのサービス業は製造業と同様、中国に拠点をひろげ、コストダウンを図り、人材獲得に動いた。人件費の高騰している中国からさらに東南アジアに拠点展開をしている。単純オペレーション業務はますます海外に移転してしまうだろう。

反面、高価格帯サービスの電話受付業務はますます需要がのびるだろうと予想される。もはや電話受付業務ではなく、コンシェルジュサービスのような高度なサービスになるだろうし、おもてなしの国、日本が取り組んでいくべき仕事であると思う。

 

雇用企業の事情として非正規雇用を全面的になくすことはできないが、非正規雇用だとしても、きちんとスキルを身に着けることで、昔話題になった生協の白石さんではない(真摯な取り組みは必ず評価される)がカリスマ電話受付スタッフとして生き残っていくことも可能だろう。どの職業でもプロ中のプロは失職することはない。

企業としても非正規雇用の雇い止めをせざるをえないことは仕方のないこととして、どんな職場でも、せめて、雇用した人材にスキルをきちんと付与して、次の職場が見つかるように育てる責任は果たしてもらいたいものだ。教育機会の提供は非正規雇用する企業の社会的責任ではないか。問題視されている非正規雇用が問題なのではなくて、(恩恵を受けている人もいるはずだから)戦力化を図り、人材活用できるかどうか、そして、企業の都合で継続雇用できないとしても、次の職場が見つかるよう人材を育成していくことが社会全体で取り組んでいくことだし、そうすることで国力を維持向上させていく取組なのではと考える。

労働者の立場としては、消えてなくなる仕事かもしれない、といたずらに心配するよりも滑り込みでもいいからつかんだ仕事で、ベストをつくせば、ぬきんでた仕事をすることで企業の都合に関係なく、自分の身を守れるに違いない。

たとえば、コールセンターの業界はリーダーやマネージャーは転職組がおおいはずだから、同業他社でおなじようなポジションで働く知り合いが一人や二人はいるはずだ。スキルをもつ人材はどこでもほしいはずだから、聞いてみれば、紹介してくれるかもしれない。そうやって、非正規社員でも職場を引き寄せていくことで、決して職を失うことはないだろうし、非正規社員でも安定して仕事を続けられる。