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日常視点の目からうろこのビジネスアイデア、ちきりんアンサーブログ

改正派遣法。派遣のしくみを理解して、上手に派遣ではたらくには?

9月30日に施行された改正労働者派遣法では、雇用機会の確保、雇用安定の配慮として、
派遣会社に派遣労働者への教育訓練やキャリア形成支援を義務付けた。

 

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アルバイトや契約社員は自社雇用であるから育成責任が雇用主にあるが、派遣社員は建前上、派遣元・派遣会社の社員ということになっているため、派遣先・派遣社員にとっての勤務先には育成義務はない(もちろん、雇用形態にかかわらず教育に熱心な会社もあるが、その熱心さが派遣社員からはうとまれることもある)。有能なマネージャーであれば、派遣だろうが、アルバイトだろうが雇用形態の別に関係なく、リーソースを最大限に生かして仕事をすることを考えるだろうから、有能なマネージャーの元で就業できる派遣社員はラッキーである。しかし、派遣法の改正の直前に成立した「同一労働同一賃金推進法」というのがやっかいで、タイトルの割に認識の仕方によっては法律の存在価値を感じさせない”逃げられる”内容になっている。

働く側からすれば、同じ仕事をしているのに賃金に格差があるのは納得できるものではない。就業開始時には経験がないからという理由で既存の同一業務従事者との賃金格差があっても納得がいくが、かといって能力が高まり、こなせる業務量が増えていったときにタイムリーに賃金を見直す機能がなければ不満が募る。

実際の使用者(派遣先)サイドからは、はじめはどのくらい仕事ができるかわからないから、この待遇でスタートします、と。これこれこういうことができるようになったら、このくらいの待遇で処遇します、といった目標設定と派遣社員の目標に対するコミットがあってはじめて同一業務同一賃金が現実味を帯びてくる。業務評価、賃金設定を柔軟にできるかどうかは個々の企業の努力にかかってくる。

ところが、派遣社員は派遣会社との雇用契約となっており、派遣社員の仕事ぶりは、派遣先への聞き込みでしか評価ができず、客観性に乏しい。また、派遣先からのオーダーに人材をマッチングさせる際にも、派遣先での仕事の実際は派遣元にはわからない。派遣対象になる業務領域が事務系から拡大していくにしたがって、業務領域は定型業務から非定型業務に広がっていくわけで、派遣社員を雇用管理する派遣元の人間では派遣社員が従事している業務内容を評価どころか把握すらままならなくなる。

法律の改正で派遣会社に派遣労働者への教育訓練やキャリア形成支援を義務付けられたとはいえ、派遣会社に頼ってはいられないのだ。失業したくなかったら、どうしたら派遣でも失業しないで次の職場に移行できるかを真剣に考えるしかない。

かつては高時給であったOAインストラクターやヘルプデスクの仕事は、パソコン人口が広がり、パソコンができることがあたりまえになったこと、また、ソフトウェアの進化に伴い、パソコンの使い勝手が改善されたこと、マクロやVBAなどの初歩的なプログラムスキルを使わなくてもそれなりの処理ができるようになったことなどのいくつかの理由で仕事がなくなっていった。20年前、まだ社内で1人1台のパソコンが配布されていない時代に事務系ソフトの技能を強みにしていた人たちは今のように仕事がなくなる時代が来るとは誰が予想していただろう。手に職があれば安心と思っていた、その仕事がなくなってきたとき、以前に比べると思うような時給提示を受けられなくなってきたタイミング、そのときになって、仕事がない、十分な所得を得られないことにはじめて気づいた人がどれほどいることだろう。OAであれば、時流に乗ったスキルを習得しつづけることで失業の危機を解消できるとおもわれがちだが、物理的な加齢によるスキルの消化不全は避けられない。

 

派遣で同じ部署に最長で3年までしかいられないのなら、3年後に仕事を選びなおせるチャンスととらえるか、辞められたら困る人になるしかない。

一般に派遣社員として継続的に働ける人は、適応性の高い人、のみこみの早い人、愛想があって周囲と協調しながら業務を吸収できる人だ。会社にとって辞められたら困る人は非定型業務をまかせられる人だ。実業務と建前上の責任は別だから、どんどん周りから仕事をとっていって、ときに不公平感を感じることもあるだろうが、将来への貯金と考えて仕事の範囲をひろげていくことだろう。

派遣でも先々有利な業務は、対外業務で社外の人から名前や顔を覚えてもらえる仕事だ。できるだけ小さい会社で人手不足の会社のほうがいい。たまたま派遣された会社が小さい会社で人手不足だったのでいろいろ経験させてもらいました・・・といえる会社のほうがいい。

事務職を希望する人は多いが、希望者過多だ。事務職の求人はどんどん減っている。求人倍率が1倍を下回っている。募集する企業が有利で強気だ。人と同じことをしていたら、書類選考もおぼつかない。

就業開始時に「あつかましいかもしれませんが、今後も安定的に仕事をしていきたいので、どんどん仕事をまかせてください」とはっきり言っておくと、周囲も仕事を依頼しやすくなる。「社内ルール上、派遣社員に任せられない仕事があれば言ってくださってけっこうです」と付け加えておけばさらに周囲は安心する。

私の仕事はここまでですから、言われたことをやっているだけなので、と自分の仕事の範囲を自分で制限をかける人には仕事は回ってこない。

よく大していい給料もらっているわけでないからこのくらいでいいか、と仕事を狭める人がいるが、そういう人は仕事の経験値の貯金がないから、いつまでたっても給料があがらない。給料あげてくれと言えないような仕事ぶりでは誰も引き上げてはくれない。

派遣で働く人の一番の問題は、給料があがりにくいことだ。毎日やったこと、時間とともにできるようになったことを必ず書き留めておくこと。そうすれば、次に仕事を探すときに楽になる。毎日書いていくのは大変だが、3か月もすると慣れてくる。契約が終了したときに履歴をそのまま面接にもっていく。そうすれば、継続して業務を遂行できる能力のある人という評価を引き出せる。こんなこと続けてできる人はそうはいない。ちょっとの努力が大きな実を結ぶはずだ。